津島市民病院

人生会議のすすめ「さあ、生きる準備をしよう」

更新日:2021年11月2日

津島市広報紙(令和3年11月)掲載記事
「ACP」とは何なのか、何をすることなのか知ってほしいとの思いから、市民病院の神谷院長が海部地域医療サポーターの会代表の横井千恵子さんと意見交換をしました。

死なない人間はいないから、その時が来るまで自分らしく生きる

「ACP」とは、「自分のこれからの生き方」を考えること

神谷院長
市民病院 神谷院長


神谷院長

「ACP」と言われているが、一般の人はきっと何のことかわからないですよね。

横井さん

周りの人にも聞いてみたけれど、ほとんどの人が「ACP」という言葉は知らないです。

神谷院長

「人生会議」ならどうでしょう。

横井さん

「人生会議」も「うーん?」という感じですね。


神谷院長

「終活」の方が分かりやすいでしょうか。

横井さん

「終活は?」と聞くと、「それならわかる」と。ただ、「荷物を整理する」とか「財産をどうする」というふうに理解している感じ。

神谷院長

「自分のこれからの生き方」というふうには、みなさんあまり考えていないということですね。

横井さん

そうですね。「生き方」というよりは、「死」については、ある程度年をとったり、がんの告知を受けたりしたら考えるかもしれません。

神谷院長

今どうしても出てくるのが「がん」で終末期(※)になったらという話ですよね。気を付けないといけないのが、例えば早期のがんは治る可能性が高いんです。だからがんの告知を受けても終末期とは限りません。がん以外にも亡くなる方で多いのは、心不全、呼吸不全、腎不全、あと老衰なんです。

人間生まれてから育って、そこからだんだん年を取り、やっぱり機能が落ちてきます。ただ、心臓や肺が悪い方は、一時的にちょっと悪くなることって結構あるんです。でも、治療することによってよくなって、また普通に近い生活が送れるようになるんです。その繰り返し。どこの時点から、終末期というのか。

※終末期とは:治療効果が期待できず、予測される死への対応が必要となった期間のこと。

横井さん

繰り返してるうちに、だんだん回復しなくなったときでしょうか。

神谷院長

回復しにくくなる時がある。もしかするとよくなるかもしれないけれども、このまま悪くなってくる可能性の方が高い、という言い方をすることはあります。

最終的には、気管内挿管といって機械につなぐ必要が出てくるかもしれません。そういった医療処置を望まれるかどうか。

心臓や肺が悪い人は終末期の期間が長いから、その途中で自分がこうなったら、もうこれ以上治療をやらないっていう選択肢が、考えられるかどうか。急に悪くなることが多いものですから。

自ら考え、周りに伝え、共有する。それを何度も繰り返す。

横井さん
海部地域医療サポーターの会代表 横井千恵子さん

横井さん

周りの人は延命治療は受けたくないとか機械につながれた最期は嫌だとか言いますが、その内容がわからないので、そういったことは、一般の人は判断することは難しいかもしれませんね。

神谷院長

医療者は治療内容についてはしっかり説明します。また、状態によっては治療しないっていう選択もあるかもしれません。ただし、何もしなかったらどうなるかっていうこともきちんとお話しします。

今、このACPをひろげているのは、結局、基本的には自分で考えましょうっていうことなんです。自分の意見をきちんとみなさんに伝えてくださいって。そうしないと周りのみんなは想像することしかできないから。


横井さん

例えば、誤嚥を繰り返すようになったら、そこで食事をやめるのか。もし自分で食べられるなら、誤嚥しながらでも食べたいものを食べて、とするのか。

神谷院長

はい。そういう選択もあると思います。

横井さん

どっちでもいいわけですよね。

神谷院長

はい、それは本人と家族がそれを承知で食べるのは構わないです。確かにそれで、もしかすると詰まって窒息したり、あと、ひどい肺炎を起こす可能性もあるんですけど。それを防止するために一切口にしない、という選択もあります。でも、食べなくても自分の唾液でも誤嚥はしてしまうんですが。

横井さん

そうですね。昔は食べられなくなると自然に死ぬしかなかったですけど、最近は点滴などで生きられるんですね。

神谷院長

そうなんです。それでもそうやって生きていくのが自分として許せるかどうかです。自分が生きていくのがね。

正解はないと思うんですよ、こういうのって。

横井さん

そうですね。

神谷院長

本人はこうしたい。でも周りもこうしたい。だからそれを、お互い元気なうちに、まずは一回話し合って、お互いがどう思ってるかを伝えることが大切なんです。

実際に「その時」になるとみんな迷うんですよね。何もしないってことが本当にいいのかって。やっぱり、みなさん何もしなかったっていう、罪悪感を感じる人が実際いらっしゃいます。

横井さん

そうですね。子どもたちにそんな罪悪感を感じさせたくないです。

神谷院長

はい。だから、もし自分がそうなった時にどうしてほしいか、周りの人と話し合っておく。

横井さん

話し合っておけば。

神谷院長

はい、本人の希望だっていうふうになりますよね。それがACPなんです。一度決めたら終わりっていうわけではなく、何度も話し合いを繰り返すことが大事なんです。

横井さん

その都度、書いておくか、言っておくかしておけば、子どもたちは罪悪感を感じなくて済むかもしれないってことですね。

神谷院長

でもみなさん「いや、そんなの言わなくてもわかるだろう」って結構思っていませんかね。

自分が考えていることは、やっぱり周りの人に、少なくともすぐ近くの人には伝えておくことが大切だと思います。

横井さん

そうでないと、自分が希望しない治療されちゃいますよ、と。

神谷院長

そうですね。

あなたが信頼できる人、あなたの思いを受け止めてくれる人は誰ですか

横井さん

でも、もし病気になったら先生に任せるしかしゃあないわ、って思ってる人が多いような気もしますけど。特に高齢の人は多い気がする。

神谷院長

今はやっぱり、任せるわって言われても困るんですよ。

本人が判断できるのが一番いい。だけども、本人が判断できなくなったときに、じゃあ誰が判断するか、っていうのが、ある程度周りが納得してればそれが一番いいんですけどね。

横井さん

だからACPの時に、自分の受ける治療についてもそうですけど、「誰に決めてもらうか」を決めとくっていうのも大事なんですね。

神谷院長

そう、それが大事です。

ただ、多分これから独り身の方って増えてくんですよ。今でも結構多いです。

横井さん

独り身で、親戚いなくても友達はいたりしますよね。

神谷院長

はい。そういう人に、「最終的には友達の誰々さんにお願いしてあります」っていうのがあって、それがわかれば。

それには前もってその友達に言っとかないと、突然言われても困ってしまいますよね。急に決断して下さいって言われても。

横井さん

たとえば、お茶飲みながら喋っておけたらいいんですよね。

神谷院長

それでいいと思うんです。私に何かあったら頼むね、って一言言ってあれば。

難しく考えなくていい、決めなくてもいい、みんなで話し合おう

神谷院長

どこで、どのようにして、誰と最後まで生きるか、っていうのがひとつです。まずは自分がどうしたいのかというのが、本当にみんなが茶飲み話でできればいいですね。

横井さん

はい。

神谷院長

やはり最後は必ずみんな亡くなるわけですから、「死」ということをタブー視せずに、話し合える雰囲気作りが重要だと思います。「死」はあくまで結果であって、そこまでは生きているわけですから。

横井さん

自分の最期について、どうしたいか決めておけば、それまでの時間何をしようか考えたり、やり残したこともできるかもしれませんね。

神谷院長

そうです。あらかじめ周りの人と話し合ってみて、考えを伝えておくことで、その時まで楽しく生きられるんじゃないでしょうか。

さあ、みなさんも「生きる準備」をしてみませんか。

神谷院長と横井さん

横井さんが代表を務める海部地域医療サポーターの会とは

ありがとうポスト

地域医療を守り育てる活動をしています。主な活動は「知って安心・受診の心得」のリーフレットで受診の心得を説明したり、「ありがとうカードとポスト」を海部地域の10の病院へ設置し、住民から医療従事者に感謝の気持ちをお届けしています。

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